プロローグ

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朝が早いためか行き交う人は実にまばらで 皆先を競っているように見える。 どうやら電車がくる直前らしく,遠くの方で警報音が聞こえた気がした。 …バカみたい。 水野志穂,16歳。 県内有数の進学校である 藍澤高校にこの春入学した。 肌を掠める空気は僅かに冷たく, 近々訪れるであろう冬を感じさせられる。 それだけの期間を過ごしたにもかかわらず"友達"と呼べる存在が出来ないのは 私立の進学校にはおよそ似つかわしくない彼女の容姿のせいだろう。 明るい茶の髪に,短いスカート。 入学早々,教師たちに"遊び人"の烙印を押された。 少し前にもトイレでクラスの女子が 関わりずらい, なにかに巻き込まれそう, などと噂しているのを耳にしたばかりだ。 実際それなりにいろいろしているし,自覚も何となしにあるので言い返さない。 別に,どうでも良かった。
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