プロローグ

2/3
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
~15年前~ 『こちら第3小隊!敵基地の制圧に成功した!』 無線から聴こえてくるのは、友軍の勝利報告。 「ご苦労なこった…」 それを聞き、一人愚痴る。一々勝利報告などする必要があるのだろうか?目の前に広がる光景を見ると、そう言わずにはいられない。 『隊長、2時の方向に反応!戦車5、戦闘機3です!』 「わかった…出るぞ」 『了解!』 部下からの知らせを受け、MUのエンジンを蒸かす。モニターには廃墟を…俺がこの手でそうした廃墟を進む戦車の姿があった。 「圧倒的な戦力差…もうこれは戦争なんかじゃない…虐殺じゃないか…」 今から数年前、地球に巨大な隕石が落下した。否、正確には隕石ではなく船…宇宙船が落下したのだが、その宇宙船は落下の途中で7つに分離、その中でも一番大きかった物がアメリカ近海に落下。政府がそれを回収し中を調べてみると、様々な超技術…オーバーテクノロジーが記録されていた。だが 「天からの贈り物も、人は所詮自分たちの欲望のためだけに使うのか…」 『はい?』 「いや、なんでもない…」 アメリカはその技術の中の一つ、ロボット開発技術を戦争のために使用。その結果誕生したのが、このMU(モビルユニット)である。政府はこれを使用し当時敵対していた北朝鮮へ宣戦布告。電撃作戦で一気に北朝鮮を壊滅へと追いやった。 「各自散開。個別に敵を討て」 『了解!』 部下の乗るMU…第一世代MUのメタルソルジャーが左右に散開していく。バルカンとハンドガンを固定武装とし、大型ランスを装備したバランスの良い機体だ。 「さて、と…逃げ出してくれるといいんだがな…」 そう言いながらハンドガンの照準を向かって来る戦車の右前方に合わせる。威嚇のつもりなのだが、今まで意味を成した事は一度も無かった。 「喰らえっ!」 両腕に内蔵されているハンドガンが火を吹く。大地がえぐれるのが、コクピットからでもよくわかった。 「…またか」 だが敵は怯まなかった。それどころか発砲までしてきた。幸いMUの装甲は戦車の砲撃の一度や二度じゃ破損しないほど丈夫にできている。 「どいつもこいつも…イカレやがって…!」 諦めてトリガーを握り直す。いくらMUの装甲とはいえ、何度も砲撃を喰らえば危険だ。一応こちらも生きているので、防衛手段は取らせてもらう。 「はぁ…」 次々と爆発していく戦車を見て、俺は今日何度目かの溜め息を吐いた。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!