プロローグ

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「ふぅ…」 任務を終えた俺たちは、旗艦であるホバーベース級へと帰還した。地上でのMU運搬をよりスムーズに行うために開発された艦だ。 「よう、マーク」 「バドガルドか…」 報告を済ませ、格納庫へ向かう俺を引き止めたのは、親友のバドガルド=エイプス。「毒蠍」の異名を持つ、アメリカ軍のエースパイロットだ。 「珍しいな…今日は出撃しなかったのか、エース?」 「第1小隊は機体整備のため今回の出撃は見送りになったのさ…それに、エースはお前もだろ?『戦場の風』マーク=ブライアン小尉?」 そう言って悪戯な笑みを浮かべ、俺の胸を小突くバドガルド。「戦場の風」は、迅速かつ冷静に敵機を撃墜する事から付けられた異名だが…正直、あまり嬉しくない。 「…別に好きでエースになったわけじゃないさ」 「おーおー、相変わらず甘ちゃんな事考えてるのか?いいか、これは戦争なんだぞ?殺るか殺られるか…二つに一つなんだ。だったら…生きたいと思うのが、人の性だと俺は思うがね?」 諭すかのように語りかけるバドガルド。確かにバドガルドの言うこともわかる。だが… 「戦争ならば、な…」 俺たちがやっているのは、戦争ではない…最早虐殺だ。圧倒的な戦力で次々と敵の拠点を制圧していく。MUのおかげで、自軍の死亡者は9割近く減った。そのかわり敵軍の死亡率は大幅に上がった。 「…ま、お前がどう思おうが俺たちは軍人…戦うのが仕事なんだ。小難しい哲学の話は学者にさせるんだな」 「ああ…」 手を振り去って行くバドガルドを見ながら、俺は拳を強く握っていた。 その後アメリカは一時期世界の半分を支配するも、国連のMU部隊によって徐々に劣勢となり、遂に敗戦。こうして第3次世界大戦は終わりを告げた。アメリカが所持していた宇宙船、マザーと、分離した6つの小型宇宙船、チルドレンは国連が管理する事となったが、ゲリラが国連本部を襲撃しチルドレンの二つを奪取。事態を重く見た国連は残りの4つのチルドレンをそれぞれ中国、ロシア、イギリス、日本へと預けた。2つのチルドレンを奪ったゲリラ達はその後、国境を持たない兵士…ボーダレスソルジャーを名乗り、各地でMUによるテロ行為を行っていた。それに対抗すべく、国連は特殊部隊「ラウンドナイツ」を結成。チルドレンの超AIを移植した新造戦艦「ワルキュリア」を旗艦とし、対抗していった。 そして15年後…物語は再び動き出す…
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