20人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
~15年後・私立葉月高校~
キーンコーンカーンコーン…
「ふぁ~っ…」
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと同時に、大きな欠伸一つ。
「何だよケン…また寝不足か?」
「るせぇ…昨日も親父の手伝いやらされたんだよ…」
茶化してくる友達に不機嫌な返事を返しつつ、再び机に突っ伏す。
「おいおい、今日はこれからカラオケの予定だろ?」
「パース…俺ムリ…」
そのままの状態で答える。死ぬほど眠い…いや、寝なきゃ死ぬと言った方が正しいかもしれない。
「ったく…しゃーねぇーなぁ…」
そう言うと友達は去っていった。
俺の名前は安藤ケン。私立葉月高校に通う、至って普通の高校二年生だ。
「ったく…子供の手伝いが必要になるような仕事なんか引き受けるんじゃねぇーよクソ親父…ただいまぁ…」
「あ、おかえりケン君」
毒を吐きながら帰宅すると、従業員のシンゴさんが迎えてくれた。
「…親父は?」
「社長なら事務所にいると思うけど…」
「サンキュー」
シンゴさんに礼を言って、事務所へと向かう。…俺の実家は「安藤鋼鉄」という名の工場で、親父は社長をしている。そこそこ大きい工場だが、従業員はシンゴさんと他5名ほど…それが俺の不満の原因の一つだった。
「親父っ!」
「ん?ああ…おかえり」
怒りに任せて勢い良く事務所のドアを開けると、何事も無い様子で親父が出迎えた。
「『ん?ああ…おかえり』じゃねぇよ!いつも言ってるけどよ…どうしてもっと従業員を増やさないんだよ!いい加減俺を使うのやめてくれよ!」
「…雇う金が無い、それに…お前の方が役に立つ」
一気に巻くし立てる俺に対し、終始冷静に返事をする親父。その態度が余計に俺を怒らせる。
「だったらせめて労働基準法ぐらい守りやがれ!くそっ!」
カッとなった俺はそう言い残し、事務所を出ていった。
「ったく…クソ親父め…」
自室に戻り、ベッドに横になる。と、枕元に置いてある写真に目がいく。
「母さんが生きてたらなぁ…」
母さんは今から15年前…第三次世界大戦の時に戦闘に巻き込まれて死んだ。といっても、その時はまだ一歳だった俺が覚えているわけはなく、親父から聞いた話なのだが。ちなみにその時親父は国連軍兵士としてアメリカと戦っていたらしい。
「…寝よ」
睡眠不足が祟ってか、写真を見ているだけで眠くなってくる。結局仮眠を取るつもりが、そのまま朝まで寝てしまった。
最初のコメントを投稿しよう!