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理性という糸が切れてしまったら、自分もあのようになってしまうのかもしれない。
その恐怖は常に彼女をとらえて放さなかった。
そんな時、室内に電子音が鳴り響いた。机上に置かれたパソコンにメッセージが着信したことを告げるランプが点滅している。
一体誰だろうか。
疑問に思いながら彼女は机に向かい、パソコンを操作した。
表示された差出人には、見覚えがない。
首をかしげながら彼女はメッセージを開く。
画面に表示されたのは、ただ一文。
──助けてくれ。third──
青ざめた顔に固い表情を浮かべ彼女は立ち上がる。
まさかそんなことがあるはずがない。
『彼』はもう死んだはずだ。
けれど……。
一瞬ためらった後、彼女は玄関へと走る。
表に貼りついているはずの惑連警備兵に通報しなければ。
勢いよく扉を開いて、彼女は思わず悲鳴を上げた。
目に飛び込んできたのは、腹や胸から血を流して倒れ伏す男達。
息を飲み込み、よろめく彼女。
その時、薄暗い中見たことのない男が薄笑いを浮かべ立っていることに気が付いた。
言葉もなく立ち尽くす彼女に、男は笑みを崩すことなく言った。
「先生、はじめまして。その様子だと、サードのメッセージを受け取ったようですね」
「あ……あなたは一体……」
「説明は後々ゆっくりと。とりあえず一緒に来てもらいましょうか」
それは提案ではなく命令だった。
果たして彼女には、突然の出来事を受け止めるしか道はなかった。
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