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｢肴｣
夕食に出てきた秋刀魚を見ていて
こんなことを思い出した
魚には神経が無いらしい
だから痛みを感じないんだそうだ
敵に襲われてぼろぼろになっても
誤って岩にぶつかっても
狭い網の底で何十万の同胞に押しつぶされても
平気な顔をして
徐々に生き絶えていくのだろう
たとえば硫酸の海に
活きたままの鮪を泳がせてみても
何食わぬ顔で突っ走るのだろうか
自分が死ぬその瞬間まで
何もわからずに
バタバタもがいているのだろうか
死ぬ瞬間に痛さも怖さも感じないのは
それは幸せなのか不幸なのか
僕はとても羨ましいと思う
死んだ魚の目玉に映る浅ましい願望
魚には神経が無いらしい
そうだ
今度活き作りにされた鯛に聞いてみよう
痛いですか
苦しいですか
天国は見えますか
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