何が為の贖罪

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「悲哀とは」 取り残された舞台そでで ギトギトした油のような悪意が 俺の体に点滴注射されていく あの女に殺され 裸のまま放置された赤ん坊の死体には 早くもウジがわきだしていた 俺はしばりつけられた机ごと ガタガタと笑いだす 目尻からこぼれ出た涙に問い掛ける なぜ道徳的に苦しまねばならないのかを ままならない身体のことを 赤ん坊にすら八つ当りする俺に どうやって悲しんだらいいのかを 何を悲しめばいいのか 誰を哀れめばいいのか 俺の演技は果たしてどこまでか本当か? 答えはわからない 俺自身もわからない 自己満足の檻の中で 鉛の固まりを飲み込みながら 俺はひたむきに笑い続ける 悲しむべくして悲しいのか 悲しまなければならないから悲しいのか 哀れなのは俺かお前か赤ん坊か 誰も物言わないまま わきだすウジの目だけが訴える 「首くくり 骨砕け」
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