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ゆっくりと引き裂くような静かな轟音が、曇天の間を縫って飛んでいる。
上を見ると、丁度近くの空を飛行機が通り過ぎたところだった。
暗い、重い灰色の雲の下に、なす術もなく何をするわけでもなく佇んでいるのは私一人だけ。
その前を、黒い人と白い花の列が通り過ぎて行く。
葬列だった。
この近くで誰か亡くなったのだ。
黒い人の列は、皆頭を下げたままで地面を見つめていた。
その葬列では黒い帽子を被った貴婦人や大人びた服装の子供、スーツを着た男が、みんな同じ貌をしている。
いつもならば元気にはしゃぐような子供や、厳つい顔の男まで。
漠然とした、死への恐怖なのか。
その隠れていた恐怖が葬儀によって垣間見えてしまったからか。
目の前の列には生気が感じられない。
それこそ、死んでいるみたいだ。
ふと、流すように見ていた白い花の中で、ひと際目立つ紫の花を見つける。
その紫の花を持っている人は、女性だった。
ここから彼女の表情は窺えないが、姿からは生気を感じた。
頭を上げていて、眼はまっすぐ前を見ている。
唇には真っ赤な口紅を塗っているのが見えた。
堂々としたその立ち振る舞いは、紫の花と同じように葬列の中で一番目立っている。
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