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「眠れないんです」
「?」
疑問符を浮かべた月に構うことも…いや、ひょっとしたら気付くことさえもせずに、竜崎は言葉を紡ぎ続けた。
「様々な者が私の脳内で様々な言葉を発します。収まらないんですそして頭が割れそうででも割れてしまったら楽になれるんでしょうかそれならば私はそちらの方を選ぶかも知れませんだけどどうすれば良いのか分からなくて分からないのに私は貴方を起こしてしまってそれで……」
「もう良いよ、竜崎。もう良い」
月は上半身を起こし、ベッドの上で体育座りの竜崎の髪を撫でた。
見て取れるほど、彼の身体はガタガタと震えている。
「僕が、お前が眠るまで見ていてやる。何なら、羊を数えてやろうか?」
月は布団をめくり、竜崎に入ってくるよう促した。
「誰かの体温が精神を安定させることもある‥お前の身体、冷たくなり過ぎ。薬に頼る前に、一度試してみるといい。こうして眠れるかどうか」
子供が縫いぐるみを抱きしめるように、何かが不足しているのかも知れない
精神的不安定さが表出する形は人によって異なる。
コイツの場合、自己覚知をすることは水から生まれる泡を箸で掴むより難しいのだろう。
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