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あの不思議な子供を見掛けてから数週間が経ち、桜木家の桜の木は薄紅色の花をこれでもかとばかりに咲かせ、傍迷惑なことにそれを散らす。
4月も中盤に差し掛かっていた。
その頃、俺はと言えば、桜木本邸と玉芙蓉様の別邸を竹箒片手に行ったり来たりするばかりだった。
18歳のガキに与えられる仕事は庭の掃除か簡単なお遣いくらいしか無いわけで、俺は掃いても掃ききれない桜の花弁に軽い苛立ちを覚えてしまう。
ザッザッとリズミカルに竹箒を動かし、掃いても切りのない桜の花弁を竹箒で寄せ集め、焼却用の麻袋に詰め込めるだけ詰め込む。
叱られない程度に掃除を終わらせ、本邸よりも少し離れた場所にある焼却炉に今日掃いた分の桜の花弁を持って行き、処分すれば仕事は終わりなわけで覚えた苛立ちも少しは和らいだ。
「よっと…。これで今日の仕事終わるぜ。」
桜の花弁の一杯詰まった麻袋の口をキュッと縛れば、ズルズルと麻袋を引きずり焼却炉までの道のりにつく。
―……ポスッ。
「―…!?」
引きずっていた麻袋が突然重たくなり、バランスを崩した俺は前につんのめった。
前進しようとする力とその場に留まろうとする力が加わり、麻袋を持っていた右肩の関節が小さく悲鳴をあげる。
少しの驚きと最高値を弾き出そうとしているムカつきにゆっくりと麻袋の方を振り返った。
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