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「ここには、たからものがはいってるの?それとも、きんかがはいってるの?」
振り返るのを待ってましたと言わんばかりに幼い声が響いた。
桜一杯の麻袋にピタッと張り付き、猫の様な濃紫色の瞳がジッっと俺を捉える。
真っ白い肌には所々に泥が付き、出会った時にはツーテイルになっていた髪の毛は下ろされ緩くウエーブしているが、そこらじゅうに葉っぱやら桜の花弁やらがくっついていた。
まったく何処に行き、どういう風に遊べばここまで小汚くなれるのだろう。
「…これには、ゴミしか入ってないよ。」
夢を崩すようだが、青少年にとっての貴重な時間を邪魔されるのもなんだか嫌で冷たく言い放つ。
濃紫色の瞳がキョトンと俺を見た後に、パチパチと音のしそうな勢いで瞬きした。
「だいじょうぶだよぉ。ボクはおくちがかたいから、ほかのひとにはいわないよぉ!」
元気いっぱいに言われれば、次はこっちがキョトンとさせられた。第一、口が固いと自分で言う人間ほど疑わしいってことを理解してないのだろうか、子供は満面の笑みを浮かべ俺を見てくる。
「言う言わないの話しじゃなくて、これは本当にゴミなの。意味わかる?ちびっ子。」
わざわざ膝を地面に付き、なるべく視線合わせるようにし、泥がついている頬をハンカチで拭ってやりながら言い聞かせた。
―……ゲシッ。
小さな足が鳩尾にクリティカルヒットし思わず子供の足元にうずくまった。
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