ニヤの法則

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ニヤが手にとったのは、なんとかというロシアの人形劇のキャラクターの顔を象ったカップで。 正直にいうと僕にはまったくその可愛いさはわからないのだがニヤにしてみれば相当気に入ったらしく、棚に置いたあともさり気なく何度か見ていた。 「この間、カップを一つ割ってしまったから。 大きさもちょうどこれ位だったかな?」 「買うのか? それ?」 僕が最近気がついた二つ目。 無表情なようでニヤはとてもわかりやすい。 怒の感情がどちらかと言えば強いニヤだが、嬉しい時や喜んでいる時の表情も実は非常にわかりやすかったりする。 目をキラキラさせながらニヤが聞いてきて。 「やっぱり止めておこうかな」 僕が少し意地悪すると、ニヤがあからさまにガッカリした顔をする。 もしニヤに猫の耳が付いていたら可哀想な程にうなだれているだろう。 僕はクスクスと笑うと、もう少しニヤで遊びたいのを我慢して。 「せっかくだし、やっぱり買おうかな」 言ってカップを手に取るとレジに並んだ。
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