707人が本棚に入れています
本棚に追加
/925ページ
結局、捨てようとしたカレーを取り上げられて「せっかく作ったのだから、たべよ」という玲の言葉に促されるまま、ニヤは玲と並んでリビングのテーブルの前に座っていた。
目の前に置かれたカレーは所々「こげ」が混ざる以外は見た目普通のカレーで、香りも良いのだが。
その味を知っているだけに、ニヤとしてはなんともいたたまれない。
「いただきます」
玲は律儀に手をあわせると、ニヤのカレーを一匙すくって口に入れる。
恐る恐る様子を伺うニヤの視線に気がついて玲はフワリと笑うと。
「とっても美味しいよ」
苦しそうでもなくそう言った。
玲の言葉に「そんなに不味くないのか?」とニヤも自分のカレーをつつくと、少しだけ食べてみる。
「まじい」
ご飯と合わさるとなぜだか粉っぽさが増して、益々不味く感じる。
「お前さ。 こう言うときに気使って、そう言うこと言うの、逆に傷つくんだぞ。
そう言うのは優しいんじゃなくて、事なかれ主義っつーの。 なんでも誉めときゃ喜ぶと思うなよ」
ニヤが睨むと、玲はもう一さじカレーを掬って。
「ごめんね」
言うと嬉しそうに食べる。
最初のコメントを投稿しよう!