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巨魁、散る。
二日後の九月二十日、先日の嵐などなかったかのように思える快晴の下、壬生の屯所では新選組筆頭局長芹沢鴨の葬儀が盛大に行われた。
会津藩、水戸藩、ほか諸藩から訪れた大勢のお歴々の前で、
「芹沢先生、ご無念は必ず」
と、見事に大粒の涙を浮かべ、弔辞に声を震わすその千両役者は、局長職にただ一人残った近藤勇であった。
(さぞ『ご無念』だろうよ)
藤堂は初めから芹沢を毛嫌いしていたが、それでも、最期があれでは余りにも可哀相ではないか。そう思うようになった。
「賊は長州らしいな」
弔文の最中、誰からそのような噂話を聞きつけたのか、耳敏い永倉が他に聞こえないよう囁いた。
「らしいな」
軽く合わせるように呟き、苟の空を見上げた。
欺瞞だらけの雲一つない空を。
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