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暗がりの中、壬生郷士八木源之丞宅の庭陰に土方、沖田、井上。母屋の玄関口では山南と藤堂が闇に紛れ、残る原田は槍を持って壬生寺の境内から裏手に陣取り、逃走者が出た場合の備えとした。
藤堂は玄関の式台に身を潜め、襲撃前の取り決めを思い出していた。
第一にして最大の目的は芹沢鴨の暗殺。
次に、一人も漏らさず皆殺しにすること。
また、最初の斬り込みは土方達が行い、それを合図に玄関口から藤堂たちが挟撃する。
以後、各人適宜行動し撤収する。
解りやすくて良い。作戦は明快さを尊ぶ。死に物狂いの中では、緻密に入り組んだ命令など意味を為さない。
(だが、これは武士の…)
頭に浮かび始めた時、雷に胆が悶え千切れるような叫び声が耳に響いた――と、同時に襖を蹴倒して入り、そのまま首を一つ、胴から落とした。血煙が舞った。
声を殺し怯えている二つの人影。桔梗屋の吉栄と輪違屋の糸里であることは先に聞き知っていた。
(女まで斬れるかよ)
藤堂は一瞥し、そままの勢いで先に駆け、それよりも奥の間で芹沢と対峙する土方達を見つけて、加勢することを急いだ。
と、その時、足下にいた一人を反射的に斬った。薄白い首の皮一枚だけが胴体と頭を繋げている。
一瞬の間を置いたあと、そこから一気に血が噴き出し長襦袢を染め上げ、さらに天井にまで飛沫を浴びせたそれは、部屋一面が血の海と化した畳の上に、ぴちゃぴちゃと落ちては跳ねた。
(…お梅さん、だったのか)
声にはならなかった。
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