第九章 下り坂

5/24
6811人が本棚に入れています
本棚に追加
/401ページ
   その日の仕事終わりに、直樹にメールをした。やっぱりどんなに忙しくても、最低でも週に2回は会いたい。  その時間の作り方を、相談したいのと寝てるだろうけど、もし起きてたら声が聞きたかったから。 “直樹、もう寝てるよね。起きたらで良いからメールくれないかな?” 「メール送信。直樹、起きててね」  お店からメールして、送迎車でアパートまで送ってもらった。 「お疲れさまでしたぁ」  部屋に入って着替えと化粧落として、シャワー浴びてから少しだけボーっとしても、直樹からの返事はない。  いつもなら寝てる時間。起きてるのを期待する、ちひろが愚かなんだよね。 「直樹ぃ、起きてよぉ」  なんだか、久しぶりに独り言が出た気がする。  独り言って、寂しいときに出るのかな。だとしたら、直樹と付き合う前のちひろはいつも寂しかったの?。  結局は直樹から連絡なくて、そのまま寝ちゃってた。 ♪~  眠ってちょっとしたくらいに、直樹からのメールが来たのを、ボーっとした頭と耳で聞いた気はする。  でも、どんなに好きでも眠気にだけは勝てない。メールの着信音を判別したのは、直樹への愛情のお陰だね。  他の着信音なら、確実に聞こえてない。 “ちひろ、おはよう。あの時間は流石に寝てるよ。もしかしたら、今日店に行けるかも。そんときに話そうよ。じゃあ、仕事に行ってくるね。” 「おはよう、直樹。いってらっしゃい」  メールに挨拶しちゃったよ……寂しさでやられちゃてる感じ。  あれっ、直樹が今日店に来るって書いてなかった?  二度見な感じで、メールをもう一度見てみる。やっぱり、来るって書いてる。 「やった。直樹に会えるよ」  嬉しくても、独り言出るじゃん。寂しさは、関係ないんだね。 「ちひろって、単純だなぁ。これだけ簡単に、テンション変われるんだもん」  それが恋する乙女の心理かもしれないけど、翔の時には感じなかった。  翔とは、恋愛じゃなかったのかもしれないなぁ。    
/401ページ

最初のコメントを投稿しよう!