第十章 違和感

3/24
前へ
/401ページ
次へ
   ちひろの問題を解決するときに、ルミちゃんがいる事が多い。  それだけルミちゃんを、ちひろが信用している証拠だろうな。今は、オレも信用している。 「直樹、ルミ、ありがとう。今日一人でいたら、変になりそうで……」 「マイ、大丈夫ウチらがついてる。今日はゆっくり寝な」  ルミちゃんが、まるで自分の娘を寝かしつけるように、ちひろをベッドで寝かせている。  少しして、ちひろは小さな寝息を立てて寝てしまった。 「ルミちゃん、ありがとうね」 「ううん、直くんこそ。でも、明日は仕事じゃないの?」 「休むよ。有給を取って、明日1日ここにいるよ」  ルミちゃんは、ちひろも明日休めるように、マネージャーに頼んでくれるって言ってくれた。  ちひろもオレも、疲れ過ぎてる。休んだ方がいいんだ。 「それで、店の方はどうなの。マネージャーの様子じゃ、厳しそうじゃない?」 「そうだね。ウチは大丈夫って思ってた」 「思ってた……それで?」 「昨日まではね。でも、確かに厳しいのかもしれない……」  いつものルミちゃんなら、笑い飛ばして大丈夫って言うはず。余程の危機的状況、なんだろうって伝わってくる。  そのまま、色々と話しを聞いてもオレ自身には、打開策なんて考えもつかない。  そのまま、寝ないで朝を迎えた。  ちひろは、まだ寝たままだった。起きる気配なんて全くない。 「直くん、ウチは今日仕事だから帰るね。マイをよろしくね」 「うん、ありがとう。寝ないで大丈夫?」 「帰ったら、ちょっと寝るよ」  笑顔で帰るルミちゃん。ルミちゃんは、強い女の子だなぁ。  ルミちゃんがいたから、ちひろが今までやってこれた。より一層、それを強く感じた。 「頑張る、頑張れば大丈夫だよね」  ちひろの寝言が聞こえる。夢の中でも、頑張って接客してるのかな。  もしかしてオレは余計な事を言って、ちひろに無理をさせてしまったんじゃないだろうか?    
/401ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6814人が本棚に入れています
本棚に追加