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「よ~し!部活だぁ!」
HRが終わると同時に席を立ち、教室を飛び出す。
担任の先生に廊下を走るなと注意されるのはいつものことだった。
廊下ですれ違う知り合いから次々と声をかけられる。
「飛鳥!頑張ってね!」
「記録、絶対越えろよな!」
飛鳥「おうよっ!!
任っかせなさぁ~い!」
陸上部に所属している私はそのまま階段を駆け下り、グラウンドへと向かった。
……と、その前に着替えがあるため部室へとUターン。
部室に入ると一足先に麻美が着替えを始めていた。
飛鳥「おっ、麻美早いね」
麻美「まぁね。大会が近いから気合いが入るじゃない」
飛鳥「だよね!」
この学校は運動部、特に陸上にはかなりの力を入れていて、陸上部は数少ない専用の部室を与えられていた。
ちなみに私は走り高跳び、麻美は200m走の選手に選ばれている。
飛鳥「で、調子はどう?」
麻美「……あんまり良くないかな。
なかなかタイムが上がらなくてさ……
飛鳥は?」
飛鳥「私も良くはない……かなぁ。
精神的なものや体調云々じゃなくて、『乗れてない』っていうのかな」
麻美「ノれてない?それって調子が悪いってことじゃない」
飛鳥「そうじゃないんだよ。
まぁ、乗るっていう表現が悪いのかな?
そうだね、『感じられない』とか『見えない』って言ったほうが分かり易いかも」
端から聞けば意味不明な私の説明に痺れを切らした麻美は、半ば苛ついてきたように聞き返してきた。
麻美「だから……
いったい何だって言うのさ?」
飛鳥「風だよ」
麻美「風?」
飛鳥「そう、風」
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