『カ〇スマンション』〔前編〕

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オレらも、入り口に車を置いて歩き出した。建物が近付くにつれて、この建物の異様さが際立ってくる。住むべき人が一人も住んでいない廃虚と化した建物。窓と言う窓はほとんど割られ、落書きも目立つ。上の方の階で、その割れた窓から悲鳴と笑い声に交じり先客のライトの灯かりが、外へビームの様に何本も伸びてせわしなく動き回っている。(これで音楽なんか流れてたら、知らない人が見たら新手のディスコ(汗)か?なんて思うかも…)なんて考えながら『オレらも行くか!』と勇んで歩み出す。ライトを照らしながら、一階の正面玄関より中へと入る。足元の散乱物に足をとられない様に気を付けながら、各部屋を見て回る。腐ってめくれた畳…天井が突き抜け、闇から何か落ちてきそうな押し入れ…今にも動き出しそうな首がない人形…散乱した書類…スプレーで書いた落書き…すえた臭い…等、何か異質の空間に迷い込んだ錯覚を覚える。しばらく散策してると、問題の階段にたどり着いた。話しを聞いたせいか緊張する…エレベーターなんか動いてるはずはなく、この建物の上下の移動アイテムは、この階段しか無いようだ。一階を上がる所に外へ行ける入り口があり、そこから外を覗いて愕然とした。1㍍先から崖の様になっていて30㍍位下に川が流れている。俺『何これ!落ちたら怪我じゃ済まねえぞ!』友『幽霊と遭遇して、パニクってここから外へ逃げたらやばいね…』事実、勢い良く飛び出したら冗談じゃ済まないだろう…。確認しておいて良かった。俺『そういや、結局お前の友達達は遭遇した後どうしたの?』弟『3階から2階へ降りる時、中間の踊り場に行く手を遮る様に立っていたらしい。んで、ダッシュで上の階に行き、【かかってこいやぁ~!】とか言いながら恐怖の余り、みんなで固まってそこら辺にある物を手当たり次第に投げまくって暴れたらしいよ。んで…空が明るんで来た頃に、全員が手に武器を持って、恐る恐る降りたらいなかったんで猛ダッシュで逃げた!(笑)』オレらも笑ったが、今日はオレらがそんな目にあうかもしれん。オレらは、気合いを入れ直して歩みを進めた。
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