辺境の島

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「チェリーブロッサム1へ、こちらハツネジマコントロール。ランウェイ16への着陸を許可する」   『チェリーブロッサム1、了解』   航空誘導灯が煌々と暗闇を照らす中、轟音とともに一機の戦闘機が初音島基地の滑走路に降りたった。 F/A-18Jスーパー・ホーネット改。 旧式のF-15Jに変わって、現在ウエストジャパンが近代化改修を加えて配備している最新鋭の機体だ。 最新鋭と言っても、元の機体は20世紀から配備されているF/A-18で、米軍ではこの機体は半分以上が引退し現在は地上基地ではF-22A、空母艦載機はF-35Cが主力機として配備され活躍しているのだが…。   WJADF(西日本・航空自衛軍)の所属マークが基地内の照明に照らされ浮かび上がり、桜の花びらの下に『チェリー・ブロッサム01』の明朝体のアルファベットが入った部隊マークと、隊長機を表す1のナンバー。ウエストジャパンの国籍マークを付けた灰色の機体は、ゆっくりと格納庫前のスポットにタキシングする。 整備班が一斉に駆け寄ると、コクピットのキャノピーが半ば無理矢理に開いた。   「まゆきと練習生たちの容態は!?」   ヘルメットのバイザーを上げて、朝倉音姫が機体の周囲に集まった整備班を仰ぐ。  「現在、高坂二尉は基地内の手術室で手術を受けておられます!練習生は島内の病院に搬送されたということ以外は…。とにかく、報告書と点検は後でいいと司令から!朝倉二尉は早く高坂二尉のところへ!」   「わかった!ありがとう、後は任せるわ!」   機体からすとっ、と降りると、音姫は基地内の手術室へと走った。
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