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「…危ないところだったわよ。あと少しキャノピーの破片がずれて深く入っていたら、心臓に突き刺さって即死だったかもしれないわね」
医務室横のベッドルームから出てきた医務長の水越舞佳が言った。
音姫が医務室に到着したときには手術は終わっており、高坂まゆきはベッドに寝かされていた。
麻酔が効いているようで、小気味よい寝息が少し聞こえてくる。
「まぁただでさえ治癒能力の高い高坂のことだし、こんな傷すぐ塞いじゃうかもねー」
舞佳はからからと笑いながら、音姫に温かいコーヒーを入れてくれた。乾燥していた口内と唇が潤ったが、少し苦かった。
「水越先生、その…あの子たちは…」
音姫が言うあの子たち、というのはまゆきについて一緒に降下した練習生たちのことだ。
見回したが、どうやらここにはいない。
「ああ…うん。ここでは一気に何人もの手術が必要な患者、面倒見きれないからうちの水越病院に緊急搬送されたんだけど…残念ながら四人とも、亡くなったわ」
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