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「…アリスの具合は、どう?」
音も無く入って来た、華奢な女性は、優雅さを醸し出しながら、アリスが眠っているベッドへ近付いた。
「…プリンセス!?」
フレデリックは、突然現れた主人に驚くが、一礼すると、ベッドから少し離れた所で、背筋を正した。
「運命とは…、悪戯なモノね……。」
眠っているアリスの頬に手を伸ばすと、愛おしむようにそっと触れ、プリンセス・レベッカは呟いた。
「ウェインから、この子を預かった時、少しでも…幸福を与える事が出来ると…、信じていたの。」
悲しさを声に滲ませながら呟いたレベッカをフレデリックは言葉も無く、見つめていた。
「ゼフィロスは、アリスに出会ってはいけなかったのよ…。彼は、『消された存在』だったのだから…。」
ふいに、レベッカは机の上に飾られた一輪の青い薔薇を見つめた。
青い薔薇…、存在してはいけないモノ。
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