…assassination…

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「ウェイン様に、ご報告を申し上げます。薔薇の姫君が……。」   広大な土地にそびえ建つ、財を尽くしたような城の、一際絢爛な部屋で、一輪の血のように紅い薔薇を見つめる主に、従者は畏まりながら、切り出した。   「君が言いたい事は、わかっている。アリスが覚醒したんだろ?しかも…、もっとも濃い血縁の血で。」   さも楽しげに、扉の前に立つ従者を見据えると、ウェインは今まさに、従者が報告しようとした事を言い当てた。   「ウェイン様の慧眼には、恐れ入ります。」   驚きながら主を見つめるが、尊敬の念を込め、深々と頭を下げた。   「アリスには、人間のままでいて欲しかったんだけど、こうなってしまっては、仕方が無いね…。彼女は私を脅かしかねないだろうし。」   ウェインは楽しげに呟き、目の前の薔薇を手に取ると、握り潰してしまった。   彼がゆっくりと手を開くと、粉々になった花びらが、ヒラヒラと床に舞い落ち、それはまるで、血が滴り落ちた様であった。
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