八雲 紫

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「こんばんは」 俺の目の前に突然、現れた女性。 年は若く見えるが、纏っている雰囲気は不釣り合い過ぎるほど貫禄があった。 夜だと言うのに日傘を持ち、服装もゴスロリチックな格好をしている。 「あら?挨拶も出来ないのかしら。あなた、礼儀知らずも甚だしいですわね」 女性は俺が挨拶をしなかったのが、気に入らなかったらしくご立腹している様子だった。 「…こ、こんばんは」 俺は女性に気圧されるように返事をした。 「それで?」 女性は俺の挨拶に、更にご立腹した様子で、手にしていた日傘を俺の喉元に突き付け言葉を続けた。 「初めて会う人には挨拶と自己紹介をしましょう、それくらいの事も親には教えてもらえなったの?本当に近頃の人間は決まって皆こうね」 女性は喋りながら傘の先端で俺の喉仏を軽く突く。 これは地味に痛い。 「…す、すいません」 取り敢えず謝る。 しかし、何だこの状況は? いきなり俺の前に現れて、礼儀知らずとか、自己紹介しろとか…。 冷静に考えると少し頭にきた。
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