53人が本棚に入れています
本棚に追加
目を覚ますと、他の五人は寝ていた。
どれくらい寝ていたのだろうか、窓もない牢屋なんで全く見当も付かない。
ふと横を見るとコップに入った水と、皿に乗ったクロワッサンが二個置いてあった。
寝ている間に食事が運ばれていた様だった。
水を飲みながら牢屋の外の様子を伺って見る。
壁に掛かった小さな燭台が唯一の明かりの様だ。
不意に小さな人影が奥の方から現れた。
俺は突然の来訪者に驚いて、手にしていたコップを石張りの地面に落として割ってしまった。
「しまった…!」
慌てて割れたコップの破片を集める。
「痛ッ!」
俺はうっかり指を破片で切ってしまった。
「誰かいるのー?」
声の主が牢屋を覗き込む。
まだ小さな女の子だった。
「え…?君は?」
ガタイの良いコワもての看守が現れると思っていただけに、俺は拍子抜けしてしまった。
「私?私はフランドールってゆーの。
姉さまは、フランってゆーけどね。
それより、あなたケーキどこにあるか知らない?
美鈴がここにケーキがあるって言ってたの!」
フランと言う女の子はお腹を擦りながら喋る。
どうやらお腹が減っているようだ。
「パンならあるけど…、食べる?」
俺は皿に乗ったパンをフランに差し出す。
最初のコメントを投稿しよう!