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「うん、…ありがと」
フランは少しはにかんだように、えへへと笑った。
その表情に俺はドキッとした。
慌ててフランから顔を逸す。
こんな年下の女の子に何ときめいているんだ俺は…。
俺は煩悩を振り払う様に頭をブンブンと振る。
フランはその様子を面白いモノを見る様な目で眺めている。
「あ…」
フランの視線が俺の怪我した指に集中する。
コップの破片で切った傷は結構、深かったのか血が溢れている。
不意にフランが俺の手を握る。
そして怪我した指を口に運び傷口を吸う。
「フラン!
大丈夫だよ!
これくらいの傷、唾でも付けてりゃ治るっ…ツッ!?」
突然、俺の指先に針でも刺さった様な鋭い痛みが走る。
フランの口から伸びた鋭い犬歯が俺の指に喰い込んでいる。
「え…ちょ、フラン?
なにふざけてるの?
痛い…よ」
次第に視界がぼやけ、意識が遠くなる。
あれ?
おかしいな?
体に力が入らない。
あんなに眠てたのに、急に眠気が…。
俺は再び意識を失った。
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