53人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
目が覚めた。
今度は、ゴツゴツの石張りの地面じゃなく、ふかふかのベッドで眠っていた。
横を見ると暖炉の前の椅子にメイドが座って本を読んでいる。
俺の視線に気付いたのか、本を閉じて俺に話しかけて来た。
「おはようございます。
気分はどう?」
「えっと、おかげさまで…と言うか、ここは…?」
俺は体を起こそうとして肘をベッドに立てたが、体に力が入らなく、ベッドに情けなく倒れ込んだ。
「あれ、力が入らない…」
「あぁ、無理に立たないでくれる?
崩れるかも知れないから、体が」
そしてメイドは、どこからか取り出したティーセットで紅茶を淹れ始めた。
温度調節までして、本格派の淹れ方だ。
「はい、おまちどう様。
動かないでね?
シーツに零れるから」
そう言うとメイドは、俺の体を起こして紅茶を飲ませてくれた。
「…おいしい」
俺はメイドからカップを受け取ると味わうように少しずつ、紅茶を口にした。
その紅茶は不思議な味がした。
今まで紅茶はティーパックでしか飲んだ事がないが、これが本物の味なのだろうか?
味は凄く濃厚で、色が赤い。
まるで血の色みたいな…。
そして不思議と体に力が漲る感覚。
最初のコメントを投稿しよう!