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俺は紅茶の残りを食道に流し込む様に、一気に飲み干した。
その様子をメイドは満足気に眺めている。
「気に入ったかしら?
お嬢様お気に入りのブレンドだけど」
メイドは俺から空のティーカップを受け取るともう一杯、紅茶をカップへ淹れてくれた。
「それじゃあ、落ち着いたところで質問に答えるわね。
ここは幻想郷の紅魔館と言う場所よ。
それで私はこの屋敷でメイド長をしている、十六夜咲夜と言います。
あぁ、あんまりメイド長や十六夜とかは、呼ばれ慣れてないから、咲夜と呼んでね?」
メイドは質問に律義に答えてくれて、名まで名乗ってくれた。
「えっと、咲夜…さん。
教えてくれて、ありがとう。
あ、ちなみに俺は、斉藤…、斉藤…。
あれ…?」
名字は思い出せるが、どうしても名前が思い出せない。
もしかして、俺って記憶喪失?
「名前が思い出せない…」
咲夜さんは少し気の毒そうな顔をした後、微笑んで俺へ言った。
「記憶が混乱しているからじゃないかしら?
姓を名乗れただけ上等、その内に思い出すわ。
さっ、折角、私が淹れた紅茶が冷めてしまうわ。
飲んで」
「…はい」
俺は記憶喪失と言うショックを受けながら、紅茶をゆっくりと飲んだ。
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