紅い悪魔の館とその住人達

4/9
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
紅茶を飲んだ後、咲夜さんに連れられて紅魔館の中を歩く。 どうやら館の主人に俺を会わせてくれるらしい。 何となく黙って、咲夜さんの後ろを付いて歩く。 屋敷はどこか外国の有名な美術館や要人宅の様に、壁や天井に高級感のある西洋風の飾付けがされている。 しかし極端に窓が少ない。 しかも窓が在るだろう場所には厚手のカーテンが掛かっていて、日光を完全に閉じていた。 照度は壁に等間隔に掛かっている燭台で充分だったが、取り換える時に不便じゃないのだろうか? 少し興味が湧き、俺は思い切って咲夜さんに聞いてみた。 「あの…、蝋燭って雰囲気出ますけど、取り替えとか不便じゃないですか?」 俺の質問に咲夜さんはわざわざ立ち止まって答えてくれた。 「窓を開けられれば気持ち良いんでしょうけど、お嬢様の体が日光に弱いのよ。 それに蝋燭の取り換えは、稀よ。 私がこの屋敷に居る限り半永久的に燃えている、から」 「咲夜さんが居る限り?」 俺は質問の答えの意味が分からなかったので、咲夜さんに聞き返した。 「私って少し時間を操れるみたいでね、蝋燭の燃える時間を遅くしているのよ」 「時間を操れるって…、それなら完全に燃えてる時に、時間を止めれば楽で良いんじゃないですか?」 咲夜さんが冗談を言っているのだと思い、俺は話を合わせた。 「うーん、それでは風情がないんじゃないかしら? モノの時間を完全に止めると言う事は、そのモノを完全に殺す事と同意義だと私は思うの。 実際に、そこに存在していても、動きもしないで、唯、存在するだけなのよ? それでは死んでいる事と大差ない。 そう言う『死』のばら撒きは、品がなくて、無粋ね。 更に、完全に蝋燭の時を停止してしまうと、私の大事な、屋敷のお仕事が一つ減って暇なの。 これはもう、商売上がったり、大問題よ。 やはり何事も加減が大事なのよ?」 「はあ、そんなもんですか」 「そんなもんよ」 時の在り方について、握り拳で熱く語る咲夜さんに、内心、少し危ない方では?と言う危惧を抱きながら、俺は相槌を打った。 「それにしても、私の能力を聞いて引かないなんて、あなたって、中々、変わった人ね。 …あー、長話が過ぎたわ。 少し先を急ごうかしら?」 俺は再び歩き出した咲夜さんの後を慌てて追った。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!