その男、住所不定無職

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「まぁ、掛けてよ。」 革張りのボロボロソファーに腰掛けるなり、課長は深い溜め息を吐いた。 どうやら説教ではないらしい。 「はぁ」 返事をしてソファーに座る。 相変わらずこのソファー、ボロイな…。 「そのさぁ、なぁんて言って良いやら…」 禿げ上がった頭を撫でながら課長は言葉を濁す。 「はぁ」 曖昧な返事で課長の言葉を促す。 「そのさ…」 「はぁ」 「斉藤くんさぁ…」 「はぁ」 「クビ」 「はぁ」 「…」 「はあぁ!?ちょ、課長なぜにですか!?」 「いやね、最近不景気じゃない。 うちもこれ以上は削るとこが人件費くらいしかなくてさ~。 まぁ、少しは退職金を出すからさ! それで手続きのことなんだけどさ…」 課長による突然の肩叩き通告。 その後、課長の話は俺の頭に全く入って来なかった。
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