序章

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「……ねぇ…。私は…必ず…生まれ変わって…貴方の元に…戻るわ…。でもね…………」 死の直前で掠(かす)れているが、鈴を転がしたように、涼しく透き通った高く優しい声で、男に最期の言葉を遺した。 伝えたい事を伝え終わり、男へ微笑みを向け、その優しく美しい微笑みのまま、目を閉じ、一筋の涙を流すと息絶えた。 それと同時に、空から雨が降る。 まるで巫女の死を哀しむように、空が泣き出した。 男は小さく、巫女の名を何度も呼びながら、涙を流した。 その周囲に光や人影が集まる。 人の形をしたもの、奇妙な形をしたもの、様々だが、誰もどれも、涙を流す者、嗚咽(おえつ)を洩(も)らす者ばかり。 それぞれが、巫女の死を哀しんだ。 ――或る年の、或る日の事…… 現代から数えて、約千年程前…… 一つの命が、その生を終えた……
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