第0章 プロローグ

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──『紅蓮の炎』周りを埋め尽くすのはそれだけだった。 地に伏しているのは倒壊した建物、瓦礫…。どれも原形を留めていない。 炎の特有の何かを燃やす音に混じって聞こえてくる人々の悲鳴…。何が起きたのか理解できずに消え行く命。数刻前まではここは街だったのだから当たり前だ。 一瞬…。一瞬の爆発で街はまるごと炎に包まれた。巻き込まれなかった者など誰一人いない。 雨が降りだした。 だが炎はまったく弱まらない。その光景はまさに『煉獄の炎』という言葉がぴったりだ。 そんな炎の中を歩く一つの影があった。全身に軽い火傷を負った少年だ。外傷はさほど酷いものではないが、衰弱し弱りきってる。微かな命の炎を灯して重い身体を引きずり、この地獄絵図のような─否、地獄絵図から逃げ出そうとしていた…。 しかし、その微かな炎に最早力はなく倒れてしまった。そして少年の目は虚ろになり次第に閉じられていく。彼はこのとき死を覚悟していた。 その時だった。黒コートを纏った男が少年の前に現れたのは── 薄れ行く意識のなかでそれを見ると同時に少年は意識を手放したのだった。
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