53人が本棚に入れています
本棚に追加
「…ほら、凄いでしょう?」
そこには、確かに地平線へと繋がる道が一本あった。
シャドウは目を細め、その道を見つめる。
「…君はこの街を出ようとは思わないのか」
「はい、私は変わりたくありませんから」
「変わりたく…?」
意味を掴めず、シャドウは再び問い返す。
「街を出れば、なにかが変わってしまう気がするんです。
それが何なのかはわかりません。
ですけど、私は今の私でいたいんです」
道を見つめるレインの瞳は、遥か彼方のまだ見ぬ街を捕らえているのかもしれない。
「…変わることが、全て悪いことじゃない」
「?」
「僕は"彼ら"のおかげで、良い方へと変われた。
人と出会えば、人は変わっていくものだ」
シャドウの言葉は確かにレインの心に染み込んでいた。
だが、彼女は知らないふりをし「そう…ですね」と呟いた。
きっと、彼はこの道も走り抜けたのだろう。
きっと、彼は今もどこかを走っているのだろう。
きっと、彼らは自分を探しているのだろう。
きっと、きっとまた会えるだろう。
僕が見つめる先には、まだ走ったことのない、新しい道が続いていた。
☆
最初のコメントを投稿しよう!