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翌日、街は昨日以上に盛り上がっていて、教会にまで音楽が聞こえてきていた。
「音楽グループが街にきているそうですよ」
僕が外を眺めているとレインが説明してくれた。
「見に行かれますか?」
「いや、パンを買いに行こう」
「そうですね」
センター街は人でむせ返っていた。
その様子に僕はあからさまに顔を歪める。
「人が多いですね」
「かなりな」
どうやら先ほどレインが言っていた音楽グループを見ようと観客が集まったようだ。
僕たちは人ごみを避けて裏路地を通った。
この街に来て初めて通った道は複雑で、初めて通る者は迷ってしまうだろう。
しばらく進むとパン屋の横に出た。
レインはそれが当たり前なのだろう、なにくわぬ顔でパン屋へと入っていった。
店を出ると、村人が急いだように駆けて行った。
まだ音楽が流れている。
おそらくまだ人が増えつつあるのだろう。
「この街に、ああいった方々が来るのは珍しいんです」
だからこそ、人々は集まるのだろう。
僕たちは、また裏路地を通って教会へと戻った。
ふと、僕は後ろを振り返った。
「シャドウさん?どうしましたか?」
「………いや、なんでもない」
なにかの視線を、感じた気がした。
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