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「走ってきたって…本当だったんだ…」
土煙を巻き上げて、地平線へと消えたソニックを見送って、レインは小さく微笑んでいた。
教会の中はいつも通りに戻っていた。
突然訪れた訪問者が去り、静けさが教会の中を支配する。
光の眩しさに上を見上げる。
照らし出された十字架に目を奪われていると、鳥たちがいっせいに羽ばたく音が聞こえた。
「?」
ふと、視界に黒いものが写った。
それを完全に目に捕えたとき、レインは慌ててそれが落ちて来る場所へと走っていた。
空から、ハリネズミが降ってきた。
あまりに唐突すぎて頭はついて行かないが、とにかく助けなくては…
それだけはわかった。
――――バァァンッ!
埃と砂を舞い上げ、レインは見事にそのハリネズミを受け止めた。
というよりは下敷きになった。
「いたい…
ん?この人って…」
『シャドウ』
懐かしい声。
自分が守りたかった人。
『自分を責めないで』
目を覚ますと見覚えのない寝袋の中だった。
体を起こし、辺りを見渡す。
木の小さな箱、その上にりんごが三つ。
ライト。
生きていく上で最低限の物が置かれていた。
「…ここは…」
本当に見覚えがない。
どうしたらいいのかわからず、ただただりんごを見つめていた。
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