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上目でちらりとその人を盗み見る。
何もかも見透かしているような透明な瞳と形の調った薄い唇。
色素の薄い茶色の髪の毛を無造作に流していて、つるんとした小さな卵型の輪郭が大人っぽい容姿の中に少年っぽさを感じる。
「いいなぁ~」
「北川さん羨ましい~」
という女子社員の羨望の眼差しを考慮に入れると、やはりこの人は部署内の王子様に違いない。
現に長年奏でることのなかったあたしの鈍いこの胸が、小田桐さんの笑顔を見ただけでこんなにも早鐘を打っている。
はっ。
いかんいかん!
いい歳した大人が笑顔だけで動揺してどーする!
あたしは働きに来たのだ。
求められるのは即戦力のみ。
浮かれてる場合じゃない。
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