登場

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月曜日の早朝。 電車はいつものように通勤ラッシュでごった返っていた。 むせ返るような圧迫感のある車両の中で、細っこい小柄の女がまるで水泳の息つぎのように天井を仰ぎながらあっぷあっぷとしていた。   誰もが嫌であろうこの人ごみは、今の彼女には全く嫌悪を感じさせなかった。   それもそのはず。 彼女は昨日まで働く意欲のあるニートだったからだ。   彼女はもみくちゃにされながらそっと目を閉じる…。
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