序章

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◆偽薬     ぼくは毎日死んでる     毎日ちゃんと起き上がって 誰かに出会い 誰かを好きになって 簡単に忘れ ジンジャーエールを飲んで 青い花を飾る花瓶を買うのだ     君に手紙を書き 家のまえの 寂れたポストに 切手を貼らずに出す   星をしばらく眺めて あの曲を歌って 今日が何日だったろうって 猫に訊くんだ   教えてくれないから カレンダーを買って     部屋に帰って 花瓶の水を入れ ため息をつく     夜11時に 目覚まし時計が鳴って なんだか頭が痛くなり 僕ははっとする           そうだった きみがいないのは   きみが もう 無くなったからだ           花瓶を投げつけて カレンダーを破る       そうして僕は 号泣し 塩っぱい水に溶けて サラサラの砂になって 死ぬのだ       僕は毎日死んでる   毎日死んで   そして翌朝   全て忘れてまた生まれて   君に手紙を書くのだ     リリー     君は一度しか死んでいないが     僕は実に何百回もずっと 君に会いたくて 死んでいるのだよ
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