序章

4/5
前へ
/32ページ
次へ
◆一度きりのはなし     一度だけ 息ができなくなる 恋をしました   一度だけ 世界中の時間を 止めたいと思いました   一度だけ 死ぬほど 抱きしめました   一度だけ 雪さえ溶けそうな キスをしました   一度だけ 死にそうなほど 泣きました     もう二度と それはありませんでした   人生に一度きりのはなしです   それは きみが なくなった月と同じで   ぼくが 恋に落ちた数と同じで     もうそれは 二度となかったのです   ぼくが死に 世界が終わっても 二度となかったのです     その一度きりのために ぼくは生まれ きみは死んだのです   その一度きりのために ぼくは息を吸い きみは溢れたのです
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加