1人が本棚に入れています
本棚に追加
「三春ー、ごめん先行っててー」
タタタ、と現在の彼氏であろう男子の元へ駆けていく友達(この間見た人と違うんだ。これで何人目か覚えてもいない)を尻目に、私は一人教科書を抱え歩みを進めた。
次は理科室への移動で、授業開始まで時間はまだある。
先に行っててと言うわりには置いていくと若干機嫌が悪くなる彼女の為に、自販機前で足を止め、そのままもたれ掛かった。
自販機は朝、昼休み、放課後しか利用出来ないため、授業の合間である今の休み時間は人が殆んど通らない。
溜め息を吐きつつ目を瞑れば、耳には自販機の音と話し声だけが聞こえる。
……って、話し声?
足音は聞こえない。
ということは立ち止まって話している筈だ。
こんな10分程度の休み時間に話すなんて。
「あの……、す、好きです!」
(う、わ、)
聞いてしまった内容に、思わず息を潜める。(告白だ、)
このまま此処に居るのは失礼だと思ったが、動けばすぐにバレてしまいそうな気がして、動けなかった。
「興味ない」
冷たく言い退けるその声に聞き覚えがあったことに気が付くのは、暫く後だった。
最初のコメントを投稿しよう!