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……狼が吠えた。我に帰る大熊は慌てて片腕を振り上げ、少年に向かって振り落とす
少年が後退、目の前に鋭い爪が落ちる。好機!大剣を手前に引いてもう一度 突きを放つ
……しかし結果は先程と同じ、切っ先は大熊の腕に当たり、火花を散らすのみ。反動は少年を弾き飛ばした
「クッ!ソ!」
悪態をつきながらも少年は着地、大熊の後ろで口を大きく開けた狼に警戒する……少年が必死に考えをまとめようと考えていた
(意味判んねえよ!ハァ!!? 絶滅種だろ!? どっちも数百年前にこの星から消えた生物のはずだろうが!なんでこんな森ん中にいんだ!クッ!ソッタレ!勝てる気がしねえ!熊には武器は通じない!なら俺の魔法技も同じ事だ!ダメージ与える手段がねえ!)
大きく開けた口に白色の球体が現れ、その大きさを増していく。気付けば正面の大熊が四つんばいになり突進の構えを見せている
(あの狼の牙にも爪にも触れねえ、刀匠が作ったナイフを簡単に砕きやがった!あれにやられりゃ即効致命傷!動物の勘なのか知らねえけど俺の魔法技を簡単に避けた!動きが速え!)
大熊が突進する!口を開け その巨大で鋭い牙を見せながら少年を襲う!焦るも構える少年!
「コラ――――――!!!」
……が、幼い声が全てを止めた
「おーこーしーてーよ!さーむーいーよー!」
……右手のみでバシャバシャと川の水を叩いていた。あの女性を忘れていた‥声からして少年と同じくらいの少女だろう、まだ川から起き上がっていない
白銀の狼が口を閉じた、白色の球体が閉じた口の隙間から煙りとなって消滅、主人であろう少女を見た。大熊は少年を凝視したまま動かない……少年が考える
(……忘れてた……つーかまだ起きてねえのか?何してやがる‥イヤ、それよりどうする、ある意味助かったけど劣勢には変わらない‥)
「ワンちゃーん!ガーちゃーん!どーこー!おーこーしーて!」
(……それより闇の奴がなんでこんなところに?‥時間稼いで作戦考えるついでに聞いとくか‥)
少年がゆっくりと動きだし、大熊が唸る、狼も視線を少年へ戻した
大剣から手を離し、ガジャンという石と金属が当たる音が鳴る
「……行けよ‥待ってやる」
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