ENCOUNTER【出会い】

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白銀の白毛 この月明かりしかない暗い森の中でも輝きは消えていない。毛の一本一本がまるで虹のような光沢を闇の中に広げている。 ‥美しい‥生きた宝石と言わんばかりの生物だ‥ 鋭く硬い牙、特注サバイバルナイフを一噛みで粉々に砕いたその顎力。素早い機動力‥ 極度の硬質な肌、岩ぐらいならいとも簡単に突き刺せるはずの魔力の刃を弾き返した‥ 見た目は普通の熊となんら変わり無い、そしてその鋼の皮膚は加工するのも不可能とされている……防御において史上最高級の魔物‥ ……ダメだ。記憶を根深く掘り起こしても該当する魔物が見つからない。そしてそう考えれば考える程‥その目に、あり得ないはずの絶滅した生物の面影を映した‥ 「……なんの生物だよ‥ありえな‥絶滅したはずだろ?……新種か?……だったらあの犬が放った魔力はなんなんだ?犬種魔族で魔力を使えるのは殆どいない、それにあんな重い魔力の塊を出せるのは‥」 少年は水浴びする少女達から目を離さず、警戒を解かず、その頭を動かし続ける‥ キマイラ‥ヘルハウンド、マンティコア……数有るモンスターの中、あらゆる角度から検証を続ける。 (待てよ?基本的に‥魔力が使えるのは知恵を持ってからじゃないのか?‥て!事はあいつ等は知恵者!?……その気になれば小さい国1つは乗っ取れるモンスター……違う、知恵持ってんなら片言でも喋れる。それに知恵を持たなくても魔力を使える魔物はいる……………頭イテェ‥) ……片手で後頭部をむしり掻く。考えれば考えるほど答えは遠退く‥ 不意に少年は両目を見開いた! 水浴びをする少女の腕を噛む大熊!立ち上がり、少女を川から引き上げた!ユラユラと身体を揺らす少女!腕からは僅かに血が流れているのが見えた! 突然の出来事で慌てる少年は、その大熊を止めようとする……僅か半歩進んだが、白銀の狼が呻き声を上げ‥少年の足を止める。 「血ぃ‥出てないか?……こいつら‥飼われてんじゃないのか?」 ……魔獣士、又は調教獣士。実は最も過酷な魔法士系統の1つである。
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