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大剣を構えたまま動かない少年。ミコの名乗る少女はガーちゃんと呼ばれる熊に乗ったままあくびを1つ、ワンちゃんと呼ばれる狼が少年を警戒し、構えを解くのを許さなかった。
(ゴーストの名前を出しても警戒するどころか表情1つ変えない、闇の奴等じゃないのか?それに電車もバスも知らない?‥意味判らねぇ‥)
「グルルルル!‥」
「!? 来るか!?」
狼が後ろ脚に力を入れたのが判った、飛び掛かるつもりか?少年は構えた大剣を前に出した、盾のように剣の面を向け、切っ先を下に斜めに大剣を立てる。白狼は前脚にも力を込めた‥
「ワンちゃん!」
「ワン!?」
しかし少女が声を発すると‥その白狼は四肢の力を抜かし、少年を向いたままおすわりの格好となった。少女が叫ぶ‥
「さ~むい!お腹へった!帰ろー!」
……緊張感が高ぶったその場所には明らかに場違いの言葉。そしてその言葉に呼応するかのように力を抜かし、殺気を無くした白狼……大剣を突き立てる少年さえも力を抜かした。
「ガーちゃん!起ーきーて!帰ろ?」
「‥クァ~ゥ?」
右手でいつの間にか寝ていた熊の背中を叩き、起こす。あくびを吐いた熊は四肢に力を入れ、身体を起こした。
「ギーたんも来て~、一緒に食べよー」
「ぎ‥ギーたん?」
更に力が抜けていく気がした、どうやらギルドの頭文字を取ったらしい……知らぬ内に汗を盛大に流す。少女は満面の笑顔で言った‥
「みんなで食べた方が美味しいもん!ワンちゃん!」
……不本意ながらも渋々した態度で立ち上がる白狼、辺りの臭いを嗅いで‥一瞬にして消えた。少年は驚き警戒する……するとまた一瞬にして熊の前に現れる。今度は口に何かをくわえていた‥
「ウォ!? いつの間に……てか!俺の荷物!」
白狼がくわえていたのは少年の荷物だった‥熊の前に置き、熊はそれを口にくわえた。そして白狼を先頭にして森の中へ入って行く‥
「な!オイ待て!俺の荷物!かえ‥ン゙ブッ!!!」
……注意。
先に行った少女は裸である。前に見える少女は仰向けに寝そべている。夜目に慣れた少年の視線の先‥
精神に今までよりずっと重く深い傷を負った少年だった‥顔を隠す片手、隙間から覗き見る少年は語る。
「た‥頼むから‥服を着てくれ‥」
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