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店員が微笑みを返して振り返り、カウンターの奥へと歩き出した。それを見送った青年は懐から新しい煙草を一本、取り出しては口に加えて火をつけた。
白煙が青年の口から吐かれ辺りのざわめきの中に消えていった。二度ほどそれを繰り返し、灰皿へ灰を落とす。すると機嫌が悪そうな大きな足音が遠くからこちらへと近付いてきた、青年は足音が聞こえた方向へ顔を向ける。
「クソガキ共々!時間を選ぶ気は無いんか!」
眉間にシワを寄せた白髪の男が、中身の入ったロックグラスを二つ持って目の前に堂々と立っていた。青年は帽子の下から見上げ、ニヤリと笑った。
「爺さん、こんな…」
「お前のお約束な格言は女と酒の年期を上げてからにしろ!」
白髪の男はイラついた表情を顕にし、左手に持っていたグラスを机に叩きつけ青年の前へと置いた。片手にもった酒を飲みながら、老人は青年の正面へと移動して椅子に座った……青年は帽子のつばで顔を隠したままだ。
「ホレ!アルコール70のクソッタレな酒だ!」
「あぃ感謝」
青年はグラスを手に取って一口飲んだ、それを真正面に見据えて白髪の男は話し出す。
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