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「め、めぐるちゃん大人っぽいねー。今まで何してたの?」
負けじと新たな質問をするルミ。
若干笑顔が引きつっているのは、まあ見なかったことにしてやろう。
「さて、それはわしには難しい質問だのう。何故かと問われれば、別に何をしていたわけでもない。からなのだが」
ふっと、自嘲気味に笑って、水に口をつけるめぐるをみて、ルミは俺のほうに向き直った。
「ちょっとあんた。本当にこの娘なんなのよ?おかしいわよ絶対……っ!」
「いや、初対面の相手におかしいって言うお前も相当おかしいとは思うが。というか、俺に聞くな」
俺だってわかんねぇんだから。
「だが、しかし」
と、めぐるは水を置いて息を吐くと、視線をルミのほうに向けて。
「大人っぽい──は言いすぎだと思うがのう。わしはまだまだ子供じゃよ。自分ひとりでは何も出来んしのう。むしろ、大人っぽいのはルミじゃ。自分のことどころか、こんな冴えん男まで養うとは、ルミは凄いのう」
その言葉に、ルミは鱗が落ちたような目でめぐるを見た。……や、つーか冴えん男だぁ?
「あら──やだ、ちょっとジン、この娘分かってるじゃない!」
突然上機嫌になるルミ。
お前、単純すぎるよ。後、俺の背中をバンバン叩くなよ。痛ぇよ。
うんざりしながら顔をめぐるに向けると、めぐるはルミを見ながら何かを呟いていた。
声までは聞こえなかったが口の動きから『大人なんてみんな単純じゃ』という台詞が見て取れた。
……明らかにお前のほうが、大人だよ。
───
しばらく話した後、ルミが唐突に、とんでもないことを切り出した。
「ねえ、めぐるちゃん。こんな男のところより、私のところへ来ない?」
「おい……!?」
何言い出すんだこいつ……!
「アンタはちょっと黙ってなさい」
俺が身を乗り出すと、ルミはそれを止める。
「まあ聞きなさい。ずっと考えてたことがあるのよ」
そして俺に、信じられないことを言い出した。
「あんた、うちに住め」
「……は?」
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