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「ちょっと……!ぐっ!?」
あんまり趣味じゃないが、ルミの腹に思いっきり一撃。
「あ……ん…た……」
倒れるルミの身体を支えて、部屋に担ぎ込んだ。
これ以上、未練たらしいのも格好付かない。
俺は無言で、部屋の扉を閉める。
覚悟は決めた。
生き残る覚悟。
オーケー。やる気が出てきやがった。
「どっからでもかかってきやがれ」
やってやるよ。
生き残るために、殺してやる。
生き残るために、死んでやる。
帰って伝えると約束した。だから俺は──。
「貴方は、ここでお終いです」
──声が。
目の前から、声がした。
「──くっ……そ!!」
「わ……!」
めぐるの頭を掴んで、地面に伏せる。
さっきまで俺の首があったところに、ナイフが飛んできた。
「ちっ……」
ここに居るのはヤバイ。
ルミが巻き添えを食らう可能性がある。
俺は伏せた身体のまま、めぐるを抱えると、とっさにアパートの手すりから飛び降りた。
「……っ!」
正面に一本──!
空中で避ける術は無い。自由な左腕で顔面を防ぐ。
「くあっ……」
目の前の手のひらから、刃が突き出る。
「ずっ……」
着地。足に衝撃が奔るが、そんなことを気にしている場合ではない。
ほぼ同時に横に転がった。
俺の着地点に、ナイフが三本。
「投げすぎだろ……っ!」
立ち上がると同時に走りぬけ、俺はアパートの影に隠れる。
さて、どうしたもんか。
とりあえず速く逃げ出さないと、ルミが巻き込まれる可能性がある。
「……存外にしぶといですね、お兄さん」
どこからと無く声が聞こえる。
声で位置は、把握できなくは無いが……。
「……気配が、無いな」
「ボクの位置を確認しようとしても無駄ですよ。ボクは視覚でないと認識できませんから」
俺の独り言に対する返答。
その声は、声変わり途中の少年のような声だった。
「一応聞いておくが、お前、どっちだ?」
「……どっち。とは?」
そりゃあ。
めぐるを取り返しに来た方か、めぐるを殺しに来たほうか。さ。
「……答える義理はありませんが。ボクの任務は、貴方達を抹殺することです。他の目的はありません」
「ふぅん」
まあ、分かってはいたけどな。
視認不能の暗殺者。まさに、俺を相手にするためのような駒だから。
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