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それじゃあ、もうひとつ、大切な確認がある。
「理解した。……それで。アンタ、俺が誰だか分かってんのか?」
「『アポトーシス』伊豆玖迅。外傷も無く敵を倒す、正体不明の暗殺者」
果たして、男の回答はそれだけだった。
よし。なら、俺の能力は通用する。
ただ……その前に。
「それだけわかってて、俺に挑むか?」
それが避けれる戦いならば、出来れば戦いたくなんて、無い。
「……ボクには、貴方の能力なんてどうでも良いのです。ボクはただ、ボクを拾ってくれた彼の為に戦うだけ」
問いに答える男。
「ええ……正直、嫉妬も混じります。ボクよりも彼の信頼を受ける貴方に。……だから、ボクは貴方を殺します」
断言する声に、俺はため息をひとつ、吐いた。
「狂信か……ったく、分からないでもないけどな。そんなに変わって欲しいなら、むしろ変わってやりたいよ」
言って、俺はめぐるを地に下ろすと、少し待っているように指示をする。
「……でもな、テメェに殺されるわけにはいかねぇんだ。ワリィけどな、死ぬのはテメェだ、後輩くん」
左手に突き刺さったナイフを無理やり抜き去り、右手に構える。
そして、俺は再び、アパートの前に躍り出た。
「……ボクは剣。真鍮の剣。『アブセント』のブラス=ダガー。彼の命の下、貴方の命を引き裂きます」
……覚悟はついさっき決めたばかりだ。
この程度で死ぬ様なら、この先に勝機は無い。
さぁ、それじゃあ。
一夜の惨劇を、再開しよう──
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