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「相変わらずきったない部屋だね。部屋に住民の性格が現れるってのは本当よねー」
俺のマイホーム(四畳一間のボロアパート。二階)に文句を付けながら、ルミはちゃぶ台の向かいに座る。
「……仕事はどうしたよ」
てか、居座るなよ。くつろぎだすなよ。マジで。
「今日は世間一般的には休日なんですけどねー。まあ、万年休日のジンさんには関係ありませんかねー」
「ぐっ……」
このアマ。地味に痛いところ突きやがる。
つうか、墓穴った……。
もっとも、俺がこいつに強気に出ることはそもそも出来ないわけだが。
ルミに見捨てられたら、ほら、俺死んじゃうもん。
「はい、今月の生活費」
ルミは畳みに寝転がりながら、俺に向けて封筒を投げ渡した。
「……いつもありがとうございます」
一応殊勝に受け取っておく。こいつが帰るまでの我慢だ、俺。
「アンタもいい加減に、定職付きなさいよ。何時までもフラフラして、何様かっつーの」
「いや、おっしゃる通りで……」
本当にルミの言う通りなので、素直に受け止めておく。
……いや、俺も普通の仕事に、尽きたいんだけどな。
……ついでに言うなら。
あくまでもついでに言うならば、ルミのことも……まあ、感謝して無いでもないし。
親も兄弟も親戚も。
頼るところがまるでない俺にとって。この強引で気まぐれで世話焼きな女性は、俺の生活費なんてもの以上に、『家族』なんて、俺には全く縁の無いものを、与えてくれた。
天涯孤独は、彼女のおかげで無くなった。だから俺は、なんだかんだ言いながらも、ルミの言葉だけは本気で受け止めている。
……本人には、秘密だけど。
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