『一撃必殺』

3/9
前へ
/50ページ
次へ
「相変わらずきったない部屋だね。部屋に住民の性格が現れるってのは本当よねー」 俺のマイホーム(四畳一間のボロアパート。二階)に文句を付けながら、ルミはちゃぶ台の向かいに座る。 「……仕事はどうしたよ」 てか、居座るなよ。くつろぎだすなよ。マジで。 「今日は世間一般的には休日なんですけどねー。まあ、万年休日のジンさんには関係ありませんかねー」 「ぐっ……」 このアマ。地味に痛いところ突きやがる。 つうか、墓穴った……。 もっとも、俺がこいつに強気に出ることはそもそも出来ないわけだが。 ルミに見捨てられたら、ほら、俺死んじゃうもん。 「はい、今月の生活費」 ルミは畳みに寝転がりながら、俺に向けて封筒を投げ渡した。 「……いつもありがとうございます」 一応殊勝に受け取っておく。こいつが帰るまでの我慢だ、俺。 「アンタもいい加減に、定職付きなさいよ。何時までもフラフラして、何様かっつーの」 「いや、おっしゃる通りで……」 本当にルミの言う通りなので、素直に受け止めておく。 ……いや、俺も普通の仕事に、尽きたいんだけどな。 ……ついでに言うなら。 あくまでもついでに言うならば、ルミのことも……まあ、感謝して無いでもないし。 親も兄弟も親戚も。 頼るところがまるでない俺にとって。この強引で気まぐれで世話焼きな女性は、俺の生活費なんてもの以上に、『家族』なんて、俺には全く縁の無いものを、与えてくれた。 天涯孤独は、彼女のおかげで無くなった。だから俺は、なんだかんだ言いながらも、ルミの言葉だけは本気で受け止めている。 ……本人には、秘密だけど。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加