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先ずはひとり、廊下に立っていた男を『殺す』。
男の手に持っていた銃が暴発し、銃声を響かせる。
おそらくこの階は防音だろう。この階から下に、音は響かない。
下からの邪魔者は気にしなくて良い。好都合だ。かつ今の銃声であちらから出てくるってんなら、こちらとしても狙いやすい。
一番近くの扉が蹴り破られる。
転がるように飛び出した男は、俺を確認すると銃を構える。遅い。転がる死体が増える。次。曲がり角から飛び出る男。俺に狙いを付ける。はいアウト。次。
既に三人『殺した』。
遅すぎる。俺を確認した時点で、『俺を視認した時点で』、もう勝敗は決まるというのに。
近くのドアノブに手を掛ける。ゾクリとした。背筋の感覚に合わせて身を屈める。
扉に穴が開く。3、4、5。
床を転がる。扉が蹴り破かれる。眼を合わせる。後一人。
「……さすがに出てこないか」
標的の傍に居るんだろう。
この状況で、要人を残して外に出るような護衛が居れば、そいつはただのバカか、
「しらみつぶしか?」
廊下の真ん中に立ち、辺りを見渡して──
視界の隅に映る、影。
「────っ!!」
野郎──攻めてきやがった──っ!!
とっさに振り向く。銃口は既に俺を向いている。速い。
男。スーツの男。後は引き金を引くだけ。それだけで俺の負け。瞳が光る。引き金が引かれれば。視線が交わる。引き金。『死んだ』という命令を。引き金。引き金。視神経が逆流する。情報が内から外へ。引き金。引き金。引き金引き金。男が、信じられないような顔を。引き金引き金引き金引き金引き金引き金引き金引き金が──。
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