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彼は焦っていた。
ただでさえ電車が遅れ深夜に原付で家に帰るというのに、あたりに霧が出始めていたからだ。
『クソッ、何でこんな時に…』
彼は悪態を吐きながらグリップをひねり、スピードをあげた。
刹那、目の前に真っ白な服をまとった女性が現れた。
気が付いた時には、すでに彼女は原付の遥か後方でうつ伏せに倒れていた。
『う…わぁあぁぁ!!』
原付はウィリーしそうな程、――いや、実際はそうだったのかもしれない――とにかく、アクセルを全開に噴かし、その場から逃げ去ってしまった。
彼が走り去り、姿が確認できなくなった時、その白い人がいたはずの場所には、もう何もなかった。
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